「1分で10万字の本が読める」とうたう量子速読は、2019年に中国で子ども向けの講座が広まり、大きな話題になりました。
本をパラパラとめくるだけで内容が頭に入るなら夢のような話ですが、中国の大手メディアはこれを「骗局(詐欺)ではないか」と取り上げています。
この記事では、量子速読が問題になった経緯と、心理学の研究でわかっている速読の限界を紹介したうえで、読むのを少しでも速くしたい人が現実的に試せる方法をまとめました。
量子速読とは?中国で問題になった経緯
「量子」という言葉を使った高速ページめくり
量子速読(中国語では「量子波動速読」)は、本のページを高速でめくるだけで内容を読み取れる、と宣伝された方法です。
名前に「量子」とありますが、物理学の量子力学とは関係がありません。
科学的な言葉を借りて、特別な力が身につくように見せていた、というのが実態に近いと言えます。
人民日報のサイトが報じた内容
人民日報が運営するニュースサイト「人民網」は、2019年10月23日の記事で、量子速読の講座を取材しています。
記事で紹介されている主な内容は次のとおりです。
- 「1〜5分で10万字の本を読み終える」といった宣伝文句が使われていた
- 子どもの受講料として2.6万元を払った保護者がいた
- 夫婦で12.8万元を払うと講師として認定する、という勧誘もあった
- 講座を開いていた分校に、地元の市場監督の当局が立ち入り検査に入った
記事の中で心理学のコラムニストは、神経の伝わる速さには限界があり、それを超えて読む速さを上げられると宣伝するものは「すべて骗局(詐欺)」だと述べています。
量子速読は、効果が確かめられた速読法ではありません。
スグレタブログ編集部研究でわかっている速読の限界
速さと理解はトレードオフ
速読については、アメリカの心理学者たちが2016年に、それまでの研究をまとめたレビュー論文を学術誌『Psychological Science in the Public Interest』で発表しています。
論文の結論は、読む速さと理解の正確さはトレードオフになるというものです。
英語の場合、ふつうの読む速さは毎分250語ほどで、理解度を落とさずに2〜3倍(毎分500〜750語)へ上げるのは難しい、と書かれています。
それでも「飛ばし読み」には使い道がある
同じ論文では、内容をすみずみまで理解する必要がないなら、飛ばし読みや速読で、そこそこの理解のまま早く読み終えられるとも述べています。
| 読み方 | 速さ | 理解の深さ | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| ふつうに読む(精読) | ふつう | 深い | 契約書、試験の問題文、教科書 |
| 飛ばし読み(スキミング) | 速い | ほどほど | ニュースの要点、資料の全体像をつかむ |
| 必要な所を探して読む(スキャニング) | 速い | 探した部分だけ | 辞書や説明書で答えを探す |
| 高速でページをめくる | とても速い | ほぼ残らない | 読書の方法としては不向き |
「速読」と呼ばれるものの多くは、実際にはこの飛ばし読みに近い読み方です。
速く読める人は「言葉の力」が強い
論文は、理解を保ったまま速く読むための方法として、たくさん読む練習をして、語彙を増やすなど言葉を扱う力を高めることを挙げています。
読む速さの中心にあるのは目の動きではなく、言葉を理解する力だからです。
読むのを速くしたい人が試せること
読む前に目的を決める
「この本から何を知りたいか」を決めてから読むと、関係のない部分を飛ばしやすくなります。
まず目次と見出し、各章の最初と最後の段落に目を通し、必要な章だけをじっくり読むやり方がおすすめです。
同じ分野の本を続けて読む
同じ分野の本を何冊か続けて読むと、専門用語や話の流れに慣れて、2冊目、3冊目のほうが速く読めるようになります。
資格試験の勉強で過去問を繰り返すと、問題文を読む時間が短くなるのも同じ理由です。
宅建の試験勉強を例に、通信講座・予備校・独学の比べ方をまとめた記事もあります。

耳で聞く読書を組み合わせる
通勤中や家事の間はオーディオブックで聞き、机では紙の本で要点を確かめる、という分け方も時間の節約になります。
本とオーディオブックで、読み終えるまでの時間がどう違うかを比べた記事があります。

スグレタブログ編集部速読の講座や教材を申し込む前の注意
速読の講座やアプリの中には、研究で確かめられた範囲をこえる効果をうたうものもあります。
- 「1分で1冊」「10倍速」など、理解を保ったまま大幅に速くなると言い切っていないか
- 「脳の眠った力」「波動」「量子」など、根拠の示されない言葉で説明していないか
- 受講料の総額と、途中でやめたときの返金の条件が書面で示されているか
- 講座を受けた後に、講師の資格取得や高額な上位コースを勧められないか
契約のことで困ったときは、消費者ホットライン188に電話すると、近くの消費生活センターにつながります。
よくある質問
量子速読に効果はありますか?
効果が確かめられた方法ではありません。
2019年には中国の人民網が、高額な受講料や講師認定の勧誘とあわせて、詐欺ではないかという問題として報じています。
速読は嘘ですか?
速く読むこと自体はできますが、理解度は下がります。
2016年のレビュー論文では、理解を保ったまま読む速さを2〜3倍にするのは難しいとされています。要点をつかむための飛ばし読みとしてなら役に立ちます。
速読の欠点は何ですか?
細かい内容や条件を読み落としやすいことです。
契約書や試験の問題文のように、一語の違いで意味が変わる文章には向きません。
読むのを速くする一番の近道は何ですか?
たくさん読んで、語彙など言葉を扱う力を伸ばすことです。
読む目的を決めてから読む、同じ分野の本を続けて読むといった工夫も、理解を保ったまま読む時間を短くするのに役立ちます。
速読は「目的に合わせて読み方を変える」くらいがちょうどいい
量子速読のように、ページをめくるだけで内容が頭に入る方法はありません。
- 量子速読は2019年に中国で、高額な講座の問題として報じられた
- 研究では、理解を保ったまま読む速さを2〜3倍にするのは難しいとされている
- 要点をつかむだけなら、飛ばし読みで時間を短くできる
- 理解したまま速く読むには、たくさん読んで言葉の力を伸ばすのが近道
まずは次に読む1冊で、目次から「知りたいこと」を決めてから読み始めてみてください。


