自転車保険は義務なのか
国土交通省の案内によると、自転車損害賠償責任保険等への加入を条例で義務にする動きは、平成27年(2015年)10月の兵庫県が最初です。 その後、多くの自治体が義務または努力義務とする条例を定めています。 同じく国土交通省の案内では、令和6年(2024年)4月1日現在(公布日ベース)、34都府県が義務、10道県が努力義務とする条例を制定しています。 数字は2024年4月時点のものです。その後に条例が変わっている場合もあるため、お住まいの自治体の最新情報も確認してください。| 区分 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 義務の自治体 | 条例で、自転車に乗る本人や保護者などに保険への加入を求めている | 自分の保険が条例の対象になるか |
| 努力義務の自治体 | 加入するよう努めることを求めている | 義務でなくても賠償リスクは同じ |
| 条例がない地域 | 条例上の加入義務はない | 事故を起こせば賠償責任は発生する |
- 「都道府県名+自転車 保険 条例」で検索し、県庁・県警・市区町村の公式ページを開く
- 義務か努力義務かと、対象(本人・保護者・事業者)を確かめる
- 対人賠償だけが対象か、対物も含むかを確かめる
- 国土交通省が公開している標準条例と条文解説も、考え方の参考になる
スグレタブログ編集部事故を起こしたとき、保険がないと何が起きるのか
自転車でも数千万円の賠償を命じられることがある
日本損害保険協会によると、道路交通法上、自転車は車両の一種(軽車両)です。 法律に違反して事故を起こせば刑事上の責任が問われ、相手にケガをさせれば民事上の損害賠償責任も生じます。 同協会が紹介している判決の例は次のとおりです。| 判決認容額 | 事故の概要 |
|---|---|
| 9,521万円 | 男子小学生(11歳)が夜間に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路で歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は意識が戻らない状態になった(神戸地裁、平成25年7月4日) |
| 9,330万円 | 男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で走行中、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は約2か月後に死亡した(高松高裁、令和2年7月22日) |
| 9,266万円 | 男子高校生が昼間、車道を斜めに横断し、直進してきた会社員(24歳)と衝突。言語機能の喪失などの障害が残った(東京地裁、平成20年6月5日) |
| 6,779万円 | 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂を走り、横断歩道の女性(38歳)と衝突。女性は3日後に死亡した(東京地裁、平成15年9月30日) |
| 5,438万円 | 男性が昼間、信号を無視して交差点に進入し、横断歩道の女性(55歳)と衝突。女性は11日後に死亡した(東京地裁、平成19年4月11日) |
未成年でも責任を免れない
日本損害保険協会は、賠償責任は未成年でも免れられないとしています。 上の表の9,521万円の例は加害者が小学生でした。 子どもが自転車に乗る家庭では、本人だけでなく保護者が入っている保険の対象に子どもが含まれるかを確認しておきましょう。- 事故の相手に重い後遺障害が残ると、賠償額が数千万円になる例がある
- 自転車には自賠責のような強制保険がなく、備えは任意の保険だけになる
- 未成年が起こした事故でも、賠償責任は免れられない
事故は減っていない
同協会が警察庁のデータをもとに示した数字では、2025年の自転車乗用中の交通事故は6万7,470件で、交通事故全体の23.5%を占めています。 自転車乗用中の死傷者のうち、19歳以下が30.5%、65歳以上が19.0%で、この2つの年齢層でほぼ半数になります。 通学の子どもがいる家庭や、高齢の家族が自転車に乗る家庭は、特に確認しておきたいところです。保険金額を見るときの目安
日本損害保険協会が紹介している5件の判決認容額は、5,438万円から9,521万円までです。 最も低い例でも5,000万円を超えており、最も高い例は9,500万円を超えています。 個人賠償責任保険の保険金額は契約ごとに違うため、自分の契約がいくらなのかを確認する必要があります。 このため、保険金額を見るときは、少なくとも上の判決例にある9,521万円を下回っていないかを1つの確認材料にできます。 保険金額の欄が空欄の場合や、「示談交渉なし」の契約の場合は、保険会社に直接確認してください。事故を起こしてしまったときの流れ
事故の相手がいる場合は、まず負傷者の救護と警察への連絡が必要です。これは自転車でも変わりません。 そのうえで、次の順に動くと、保険を使うときに慌てずに済みます。- けが人がいれば救護し、119番や110番に連絡する
- 相手の連絡先と、事故の状況(場所・時間・天候)を記録する
- 保険会社または代理店に事故の連絡をする(そんぽADRセンターは事故連絡の窓口ではない)
- 相手との示談の話は、保険会社に相談してから進める
「自転車保険」の名前でなくても条件を満たせる
警視庁の案内では、自転車運転中の賠償責任を補償する保険として、次のものを確認するよう示しています。| 確認する保険 | どこで見るか |
|---|---|
| 「自転車保険」などの名称の、傷害保険とのセット商品 | 保険証券、契約のマイページ |
| 自動車保険の特約 | 自動車保険の証券にある個人賠償責任特約の欄 |
| 火災保険の特約 | 火災保険の証券にある個人賠償責任特約の欄 |
| 傷害保険の特約 | 傷害保険の証券 |
| クレジットカードの付帯保険 | カード会社の会員サイト |
| 会社などの団体保険 | 勤務先の総務・人事 |
| PTAなど学校・大学で募集される団体保険 | 学校からの案内 |
| 交通安全協会の自転車会員の団体保険 | 会員証や案内 |
- 自動車保険や火災保険の特約が、同居の家族も対象になっているか
- 保険金額が十分か(上の判決例は数千万円から1億円近い)
- 示談交渉サービスが付いているか
- 特約の名前は会社ごとに違うため、保険会社の案内で内容を見る
スグレタブログ編集部加入前に確認する手順
新しく契約する前に、次の順で確認すると、無駄な契約を避けられます。- 住んでいる自治体の条例を調べる:義務か努力義務か、対象は誰か
- 手元の保険証券を集める:自動車保険、火災保険、傷害保険、クレジットカード、勤務先の団体保険
- 個人賠償責任の有無を探す:特約の名前が違うことがあるため、不明なら保険会社に問い合わせる
- 対象者を確認する:本人だけか、同居の家族まで含むか
- 保険金額と示談交渉サービスを見る:数千万円の賠償に耐えられる額か
- 足りない部分だけ追加する:賠償を足すのか、自分のケガの補償を足すのか
賠償と自分のケガは別に考える
日本損害保険協会は、自転車事故の損害賠償責任は個人賠償責任保険で、自分自身のケガは傷害保険でそれぞれ補償されると説明しています。 条例が求めているのは、おもに他人の生命・身体への損害の賠償です。| 備えたいこと | 該当する保険の種類 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相手にケガをさせたときの賠償 | 個人賠償責任保険(特約を含む) | 条例の加入義務の中心。業務中の事故は対象外 |
| 自分のケガの治療費・入院 | 傷害保険 | 交通事故のみ補償するタイプもある |
| 相手の物を壊したときの賠償 | 個人賠償責任保険 | 東京都では対物は努力義務とされている |
状況別の考え方
- 自動車保険や火災保険に入っている人:個人賠償責任特約が付いているかを確認する。付いていれば、新しく自転車保険を契約しなくても条件を満たせることがある
- どの保険にも入っていない人:賠償責任を補償する保険を新しく契約する。自転車保険のほか、傷害保険や火災保険の特約も選択肢になる
- 子どもが自転車に乗る家庭:保護者が契約している保険の対象に子どもが含まれるかを確認する。学校・PTAの団体保険も確認する
- 通勤・仕事で自転車を使う人:業務中の事故は個人賠償責任保険の対象外になるため、勤務先の保険を確認する
家族の構成ごとの確認先
| 家族の状況 | まず確認する保険 | 見るところ |
|---|---|---|
| 一人暮らしの社会人 | 火災保険(賃貸の借家人保険を含む)、クレジットカード、勤務先の団体保険 | 個人賠償責任の有無、保険金額 |
| 小・中学生のいる家庭 | 保護者の自動車保険・火災保険の特約、学校・PTAの団体保険 | 子どもが対象に含まれるか |
| 高校生・大学生 | 同上。通学で県をまたぐ場合は通学先の条例も確認 | 別居している場合の対象範囲 |
| 高齢の親が自転車に乗る家庭 | 親本人が加入している保険や、同居の家族の特約 | 同居・別居で対象が変わるか |
| 自転車で仕事をする人 | 事業主の賠償責任保険 | 業務中の事故が対象か |
仕事で自転車に乗るときは別の扱い
日本損害保険協会と警視庁は、業務で自転車を使っている最中に起こした事故は、個人賠償責任保険では補償されないと案内しています。 事業主が事業用の賠償責任保険に加入する必要があります。 東京都では、業務で自転車を使う事業者に、従業員の業務中の賠償をカバーする保険等への加入が義務づけられています。 配達や営業回りなどで自転車を使う場合は、個人の保険だけでは足りないことがあるため、勤務先や委託元に補償の有無を確認しておきましょう。TSマーク付帯保険とは
警視庁の案内では、TSマーク付帯保険は、点検整備された自転車の車体に付く保険として紹介されています。 保険は人ではなく自転車に付くため、有効なのは点検日から1年以内です。 警視庁は、補償条件が限られているため、点検日から1年以内のTSマークが貼られているかを確認するよう求めています。 愛知県警の案内では、TSマークには種類があり、賠償責任の限度額が1,000万円のものと、1億円のもの(示談交渉サービス付き)があります。 TSマークだけで十分かどうかは、種類と補償内容、ほかの保険との組み合わせで変わります。契約するときの注意点
- 対象者:本人のみか、家族全員かで保険料も補償範囲も変わる
- 賠償の保険金額:重い後遺障害が残った事例を考え、金額を確認する
- 示談交渉サービス:加害者の代わりに保険会社が相手方と交渉してくれるか
- 補償が始まる日:申込日から補償されるのか、手続き後に始まるのかを確認する
- 対象外の場面:業務中の事故は個人賠償責任保険では補償されない。そのほかの免責事由は約款で確認する
- ほかの保険との重複:同じ補償を二重に契約していないかを確認する

賠償リスクへの備えは、バイクの任意保険でも同じ課題があります。

バイクと自転車では事故の態様も補償内容も違いますが、任意保険で何を備えるかという考え方には共通する部分があります。
事故を未然に防ぐために
保険に入っていても、事故が起きたときの被害や負担はなくなりません。 日常の乗り方を見直すことが、いちばん確実な備えです。2026年4月から自転車にも青切符が導入された
仙台市の案内によると、令和8年(2026年)4月1日から、自転車の交通反則通告制度(いわゆる青切符)が導入されています。 対象は16歳以上で、対象となる違反行為は113種類です。| 違反行為 | 反則金 |
|---|---|
| 携帯電話の使用(保持) | 12,000円 |
| 信号無視 | 6,000円 |
| 通行区分違反(逆走・歩道通行など) | 6,000円 |
| 一時不停止 | 5,000円 |
| ヘッドホン・イヤホンの使用(大音量の音楽を聞きながらの運転) | 5,000円 |
| 傘さし運転 | 5,000円 |
| 並進(並んでの走行) | 3,000円 |
| 2人乗り | 3,000円 |
- 夜は必ずライトをつける
- スマートフォンを見ながら、またイヤホンで周囲の音が聞こえない状態で乗らない
- 信号と一時停止を守り、歩道では歩行者を優先する
- 下り坂ではスピードを落とし、片手運転をしない
困ったときの相談先
保険の契約内容や支払いについて、保険会社とうまく話が進まないときは、そんぽADRセンター(日本損害保険協会)に相談できます。 電話は全国共通で03-4332-5241、受付は月曜から金曜(祝日・休日と12月30日から1月4日を除く)の午前9時15分から午後5時までです。 加入の手続きや事故の連絡は対応外のため、保険会社や代理店に連絡してください。 契約を急かされたり、不要なオプションを勧められたりして困ったときは、消費者ホットライン(188)で、最寄りの消費生活相談窓口につながります。自転車保険のよくある質問
自転車保険は必ず入らないといけませんか?
住んでいる都道府県の条例によります。国土交通省の案内では、2024年4月1日現在、34都府県が義務、10道県が努力義務としています。お住まいの自治体の最新の条例を、県庁や市区町村の公式ページで確認してください。
自動車保険に入っていれば、自転車保険は不要ですか?
自動車保険に個人賠償責任特約が付いていれば、条件を満たせることがあります。特約の有無、対象になる家族の範囲、保険金額、示談交渉サービスの有無は、保険証券か保険会社の案内で確認してください。
子どもが自転車に乗る場合、誰の保険を確認すればよいですか?
未成年の子どもが乗る場合、東京都のように保護者に加入を求める条例があります。保護者が入っている個人賠償責任保険の対象に子どもが含まれるか、学校やPTAの団体保険がないかを確認してください。
通勤や配達で自転車を使うときも個人の保険で足りますか?
日本損害保険協会と警視庁は、業務中の事故は個人賠償責任保険では補償されないと案内しています。事業主が事業用の賠償責任保険に入る必要があるため、勤務先や委託元に補償の有無を確認してください。
TSマークの保険があれば十分ですか?
警視庁は、TSマーク付帯保険は補償条件が限られているとしています。有効なのは点検日から1年以内で、種類によって賠償責任の限度額も違います。ほかの保険と合わせて足りるかを確認してください。
示談交渉サービスとは何ですか?
保険会社が加害者に代わって、被害者側と賠償金額などの話し合いを進めるサービスです。付いているかどうかは契約によって違うため、保険証券や約款で確認してください。付いていない場合は、自分で相手方と交渉することになります。
保険会社とトラブルになったときの相談先はありますか?
そんぽADRセンター(03-4332-5241、平日午前9時15分から午後5時)で、損害保険に関する相談を受け付けています。勧誘や解約で納得できないことがあれば、消費者ホットライン188にも相談できます。


